フィールド録音をしたり、ASMR動画を撮影したりするのに高性能レコーダーは非常に便利です。
TASCAM Portacapture X6は持ち運びもできて、パソコンとの接続も可能。レコーダーとしてもオーディオインターフェイスとしても使える、高性能レコーダーです。
最も大きな特徴は、32bit-floatに対応していること。録音機材が好きな方の間では、徐々に認知されてきているものですが、対応製品数が非常に多いとは言えません。
また、ほかにも本機にはさまざまな特徴や魅力があります。
そこで今回は、TASCAM Portacapture X6の基本仕様を紹介したうえで、良いところと気になるところをレビューしていくので、ぜひご参考ください。
TASCAM Portacapture X6の基本仕様
まずは、TASCAM Portacapture X6の基本仕様について紹介します。詳しいスペックについては公式ページの「仕様」の項目に表でまとめられているので、そちらをご参照ください。ここでは、そのなかから一部を抜粋し、機能をメインに紹介していきます。
どのような機能を持っているのかを簡単に解説するので、TASCAM Portacapture X6がどのようなレコーダーなのか知りたい方はぜひご参考ください。
簡単なスペック・機能一覧
- 録音再生フォーマット(WAV):44.1k/48k/96kHz、16/24-bit、32-bit float
- 録音再生フォーマット(MP3):44.1k/48kHz、128k/192k/256k/320kbps
- 入力チャンネル数:最大4チャンネル
- 録音トラック数:最大6トラック(4トラック、ステレオミックス)
- マイク入力/ライン入力対応
- ライン出力/ヘッドホン出力対応
- USBコネクタ:Type-C(USB2.0 High-Speed)
- USBサンプリング周波数:44.1k/48k/96kHz
- USB量子化ビット深度:24bit
- 2.4インチカラータッチパネル搭載
- アプリランチャーシステム搭載
- A-B方式/True X-Y方式の切り替え可能ステレオコンデンサーマイク搭載
- 2系統のXLRマイク/ライン入力を装備、ファンタム電源(+24V+48V)対応
- 32bitフロート処理により音割れせず高い解像度を保った録音を実現
- 6in/2outの32bitフロート対応USBオーディオインターフェイス機能
以上が、本機の簡単なスペックと機能の一覧です。
最大96kHzの32bit floatに対応しています。96kHzでは、録音できる周波数の上限が非常に高いです。
一般的なフォーマットの44.1kHzの場合、22.05kHzの音まで録音できます。
一方96kHzの場合は、48kHzまでの高音の録音が可能です。より高い音まで正確に録音ができるため、音声の正確性・再現性が高くなります。フィールドでの環境音の録音や、ASMRの録音だけでなく、音楽の録音にも最適です。
Portacapture X6とX8の違い
- XLR入力×2ch
- 最大サンプリングレートが96kHz
- 搭載マイクのサイズ
Portacapture X6とX8の大きな違いは、以上の3点です。
まず、XLR入力ですが、X6は2chとなっています。
一方、X8はその倍の4chです。
高性能なオーディオ機器に、よく使われる接続端子です。オーディオインターフェイスなどと接続して使うのが、一般的。チャンネル数が多いと、それだけセッティングの幅が広がります。
さらに、最大サンプリングレートはPortacapture X6では96kHzですが、X8では192kHzです。X8のほうが、X6よりもずっと情報量が多い音声データの録音が可能。録音できる周波数の上限もより高くなります。
また、搭載しているマイクもX6よりX8のほうが大口径です。大口径のほうが感度が高くなり、音が少しだけ暗めになります。
小口径のほうが感度が低いですが、音の明るさでは優位です。
一般的な用途では、Portacapture X6で十分な性能があります。X8は上位機種ということもあり、プロ仕様です。その分、大きく重くなります。
取りまわしの気軽さと扱いやすさでは、X6のほうが優位です。またX8と比較して性能が劣るとしてもプロ用途としても使える性能を持ち合わせています。
これからレビューしていく内容も踏まえて、どちらが自分に合うのか、また、どちらも合わないのかなどを考え、慎重に判断しましょう。
TASCAM Portacapture X6の良いところをレビュー
TASCAM Portacapture X6の基本仕様やX8との違いについて、簡単に紹介してきました。ここからは、Portacapture X6の良いところについてレビューしていきます。どのような魅力があるのかが知りたい方や、各機能についてより詳しく知りたい方はぜひご参考ください。
囁き声でも大音量でもクリアに録音可能
本機は、音が割れないことを売りにしています。
これは、32bit float録音による恩恵です。32bit floatは、非常に小さい音から非常に大きな音まで扱えるのが特徴。ライブハウスでのバンド演奏をその場で録音しても、音が割れず綺麗に録音できます。
一方、囁き声もクリアに録音可能です。
レコーディングにおいて、音割れは最も気にすべきこと。プロの現場では、少しでもレベルオーバーすると録音をやり直すことになります。これは、長年レコーディング業界では変わることのない常識です。
ところが、本機であれば潰れてなくなった歪んだ波形の音も、綺麗になります。
ASMRでも、バンド録音でもマルチに使える便利なレコーダーです。
幅広い録音シーンに対応
TASCAM Portacapture X6は、幅広い録音シーンに対応しています。
本機に搭載されているステレオコンデンサーマイクは、回転させるだけでAB方式とXY方式とを切り替えられます。
AB方式は、広がりのある音の表現が得意です。ライブハウス内の残響など、周囲の環境音も含めて録音するのに向いています。
XY方式は、自然な奥行と広がりを表現するのが得意な立体的な音です。ソロ演奏、ライブリハーサルなどに使えます。
このふたつを切り替えることで、幅広い録音シーンに対応可能です。
さらに、2系統のXLR入力を備えていることも、録音シーンの幅の広さに貢献しています。
また、外では本体だけでレコーダーとして使え、家や録音設備のある環境ではマイクとしても使えるのもいいところです。
乾電池式だからバッテリー寿命の心配不要
TASCAM Portacapture X6は、乾電池式のレコーダーです。
単3乾電池4つで動作します。
44.1kHz/24bitで録音する際、アルカリ電池で約13時間30分ほど持続。96kHz/32bit-float録音の場合は、当然より短くなります。
乾電池式のメリットは、バッテリー寿命の影響を受けないことです。バッテリーは充電すれば何度も使えるため快適ですが、寿命があります。使い勝手をよくしようと頻繁に充電すれば、寿命を迎えるのも早くなるのがネック。
乾電池式ならば、バッテリー寿命の心配は不要です。より長く使えます。
また、電池がなくなった場合にも乾電池式であれば、コンビニなどで電池を購入してすぐ使えるので緊急時にも便利です。電池をストックしていれば、充電のストレスもなくなります。
気軽に録音できるプリセット
TASCAM Portacapture X6には、録音プリセットが6つ搭載されています。
- マニュアル
- フィールド
- ミュージック
- ボイス
- ポッドキャスト
- ASMR
それぞれ、名前から用途がわかりやすいです。
マニュアルだけわかりにくいですが、ディスプレイ上に説明が表示されます。マニュアルモードは、最大4チャンネル入力のマルチトラック録音が可能なモードです。入力ごとに調整をしたり、ミキシングをしたりできます。
各プリセットのクオリティも高く、用途ごとに気軽に最適化できるのがいいところです。
調整に慣れている人はマニュアルで調整し、初心者の方はプリセットで気軽に最適な調整で録音ができます。
そのため、初心者にも、上級者にもおすすめです。
反応がいいタッチディスプレイ
本機のディスプレイは、タッチパネル式です。画面は大きすぎず小さすぎずといったところ。指先で操作するには、特に不便に感じない程度の大きさです。
さらに、反応が良好なのが魅力。スクロールの追従性も高めで、ゲインの調整もしやすくなっています。
直感的に調整できるので、機械の操作があまり得意ではない方でも安心です。
オーディオインターフェイスとしても使える
TASCAM Portacapture X6は、USBで接続してオーディオインターフェイスとしても使えます。
XLR入力が2系統あるので、マイクは2本まで接続可能です。Youtubeの生配信などであれば、マイクは1本で十分。配信用のオーディオインターフェイスとして使うのにも、おすすめです。
ミキサーにもなるので、これさえあれば事足ります。
別売アクセサリーによる機能拡張
TASCAM Portacapture X6には、Bluetoothアダプターという別売アクセサリーがあります。
これを使うことで、スマホからのリモートコントロールが可能です。iPad、iPhone、Android用アプリ「Portacapture Control」を通して、録音・停止などさまざまな操作ができます。
スマホから、リモートでの設定も可能です。
たとえばライブのリハーサルなどで、客席の近くに置いておいてPAブースから操作するといった使い方ができます。
また、フィールド撮影で、映像を撮影する位置と音を収録する位置を変えたいシーンでも活躍します。
このようなアクセサリーによる機能の拡張も、本機の魅力のひとつです。
TASCAM Portacapture X6の気になる点をレビュー
TASCAM Portacapture X6の良いところについて、レビューしてきました。良いところもあれば、もちろん、気になる点もあります。その両方を知ることが、自分に合う製品かどうか見極める際には重要です。
良いところだけを見て購入しても、あまりにも気になるところがあれば失敗したと思ってしまうことがありますから。
そこで今度は、TASCAM Portacapture X6の気になる点について、レビューしていきます。
マイクの取り外しができない
TASCAM Portacapture X6は、内蔵マイクの取り外しができません。
なお、上位機種のX8では、マイクの取り外しが可能です。
付属マイクと同等以上の性能のマイクがあれば、それを取り付けられるのが取り外し可能なタイプのいいところです。
一方本機は取り外しができないので、より高性能なマイクに変えることはできません。
ただ、付属マイクが非常に高性能です。そのうえ、付属マイク以外では32bit-floatに非対応。
そのため、本機において取り外し不可という部分は、人によっては気になる可能性はあるものの、それほど大きなデメリットとは言えません。
乾電池式は人によっては面倒に感じる
TASCAM Portacapture X6は、乾電池式です。乾電池式のメリットは、バッテリー寿命を気にしなくてもいいことと、電池のストックさえあれば充電すら気にしなくてもいいこと。現場での電池切れにも、即座に対応できます。
一方、人によっては面倒に感じる部分があるのも事実です。
乾電池を購入してストックしておく手間がかかりますし、取り換える手間もかかります。
バッテリー式であれば、非常に楽です。
ただ、本機はTASCAM製品用バッテリーパック「BP-6AA」に対応しています。
それを使えばバッテリー式にできるので、本機が気になるけど乾電池式は嫌だという方は、そちらもあわせて購入するのがおすすめです。
UIがあまり使いやすいとは言えない
TACAM Portacapture X6は、タッチパネルの反応が良好です。
ただ、UIに関してはあまり使いやすいとは言えません。直感的な操作に反して、UIは若干わかりにくいところがあります。モード選択画面は簡単なのですが、調整画面などが部分的にわかりにくいです。
特にレイアウトに関しては、若干目が滑る可能性もあります。
TASCAM Portacapture X6はこんな方におすすめ!
- オーディオインターフェイスとレコーダーの両方が欲しい方
- ASMR動画の収録やASMR配信を行う方
- 環境音を含めた音声作品を制作している方
- ライブの録音で使いたいバンドマンの方
- 32bit-float録音を試してみたい方
- はじめて高性能レコーダーを購入する方
TASCAM Portacapture X6は、以上のような方々におすすめです。
本機はレコーダーですが、オーディオインターフェイスにもなります。どちらも欲しい方には、最適な製品です。両方買うよりも、コストを抑えられます。用途によってはチャンネル数が足りなくなる可能性もありますが、配信用では十分です。
さらに、環境音の収録やASMRの録音などに向いているため、音声作品の制作者やASMR配信者にもおすすめ。
そして、大きな音でもクリアに録音できる32bit-floatの特性を活かし、ライブの録音で使いたいバンドマンにもおすすめです。
もちろん、32bit-float録音を試してみたい方にも最適。比較的手に入れやすい価格で、近年注目度が高まりつつある録音技術を試せるので、コスパがいいです。
また、高性能かつ高機能なレコーダーとしては比較的安価で、なおかつ初心者でも扱いやすいという特徴から、高性能レコーダーをはじめて購入したいという方にもおすすめですよ。
まとめ|いつでもどこでも使いやすいレコーダー
本記事では、TASCAM Portacapture X6についてレビューしてきました。
32bit-float録音の恩恵で、囁き声などの非常に小さな音からバンド演奏などの非常に大きな音までを簡単に綺麗に録音できるのが、本機最大の特徴であり、魅力です。そこに魅力を感じるかどうかで、本機が向いているかどうかが変わります。
そこに魅力を感じるのであれば、オーディオインターフェイスとしても使える幅の広さや初心者でも使える扱いやすさなど多くのメリットが感じられる可能性が高いです。
今回紹介したような内容をもとに、自分に合うかどうかをしっかり見極めて、購入を検討しましょう。
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